English 「学校に入らないで勉強する仕方を教える」クーボー大博士 |
飢饉に挑んだブドリの生涯 |
「グスコーブドリの伝記」は、火山の技術者で冷害による飢饉を防ぐために自らの命を犠牲にして火山を爆発させたブドリの伝記という形をとっている物語である。 10歳の頃の飢饉による両親との死とそれに続く少年期のブドリのさまざまな辛い体験が描かれ、その原因になっている旱魃や冷害に対処する科学や農業技術を学ぶことにブドリは熱意をもつようになることが語られる。 |
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理想の教師像としてのクーボー大博士 | イーハトーブ火山局の技師ペンネンナームの所の装置には、イーハトーブの火山の状態の計測結果が送られてきて、即時に火山の様子が模型に表現されるというSF的なものだが、こうした技術的な空想もこの物語では飢饉への対処という願いと結びついている。ブドリはクーボー博士の紹介でこの火山局で働くようになるのだが、このクーボー博士は、賢治が思い描いた教師の理想の姿であるように思われる。 | |
飢饉で両親を失ったプドリの苦労 クーボー大博士との出会い |
飢饉で両親を失ってから、はじめにブドリは森のてぐす飼いの男のところ、つぎに赤髭の男の沼ばたけで辛い仕事をする。赤髭の男はブドリと沼ばたけにオリザを植えるが病気でうまく育たない。がっかりした男は、死んだ息子が学んでいた本をたくさんブドリに渡してオリザづくりを勉強させる。その中にあったのがクーボー博士の物の考え方を教えた本だった。 やがてブドリはイーハトーブの市に出て、クーボー博士の学校を訪ねる。「あの親切な本を書いたクーボーといふ人に会ひ、…みんながあんなにつらい思ひをしないで沼ばたけを作れるやう、また火山の灰だのひでりだの寒さだのを除(のぞ)く工夫(くふう)をしたい」という思いで胸がいっぱいだった。 |
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「歴史の歴史」 の模型 |
クーボー博士が講義中の大きな教室にブドリが入っていくと、黒い壁にたくさんの白い線が引いてあり、「大きな櫓(やぐら)の形の模型」をあちこち指しながら説明している。「一つのとつてを廻しました。模型はがちつと鳴つて奇体な船のやうな形になりました。またがちつととつてを廻すと、模型はこんどは大きなむかでのやうな形に変りました。」ブドリはこれを見て博士の本にあった「歴史の歴史」の模型であることがわかる。 | |
知識より学ぶことの面白さを教える | 「グスコーブドリの伝記」の異稿ではこの学校について「学校へはひらないで勉強するしかたを教へるんだ。」と説明されている。つまりクーボー博士は、知識を教えることより、考える視点や姿勢、学ぶことの面白さを伝えることを重視する教育者である。 |
ちくま文庫「宮沢賢治全集 8〜『グスコーブドリの伝記』」より この作品に関するコラムへ 1 2 3 4 |
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