English 毒もみのすきな署長さん |
法律で禁じられていても、好きなものは好きとう官吏 |
賢治の物語には、官吏でもさまざまな人物が出てくる。「税務署長の冒険」の税務署長は、密造酒を取り締まるために自ら危険を冒すが、「毒もみのすきな署長さん」の警察署長は、法律で厳しく禁じられている毒を使って魚をとるのが大好きで、それが発覚して刑死する。法律で禁止され、厳罰に処せられようと好きなものは好きだ、という豪胆な人物が描かれている。
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毒もみの法律による禁止 | この物語の舞台は、四つのつめたい谷川が合流して一つの川になるプハラの国になっている。この国の法律の第一条には「火薬を使って鳥をとってはなりません、毒もみをして魚をとってはなりません。」と書かれている。毒もみとは、山椒の皮を乾かして臼でよくつき木灰を混ぜたものを袋に入れ、水の中で手でもみだすことで、この毒で魚が死んで浮かびあがるのだ。この町では警察のいちばん大事な仕事は、この毒もみを取り締まることだった。 | |
新しい警察署長 | ある夏、新しい警察の署長に、赤髭がはねて、すべて銀歯の河獺(かわうそ)に似た人物が着任する。この人は立派な金モールのついた長いマントを着て、毎日ていねいに町の見まわりをする気さくな人だった。 | |
法律違反の毒もみの発生 | ところが規則違反の毒もみをする人がいるらしく、山椒の木の皮がむかれていたり、死んだ魚が浮いていたりということが起きる。そして、沼の岸で石を投げたら、署長がいて叱られたという子供が出てくる。子供に署長は、毒もみをする者を押さえようと一日見張っているだから早く帰れと言ったのだ。 | |
署長の毒もみの発覚 署長の残した台詞 |
しかし、半年ほどすると、夜、署長が頭巾をかぶって他の男に毒もみの指示をしているのを見たという子や、署長が家から灰を二俵買ったという子供が現れ大騒ぎになる。 黙っていられなくなった町長が署長に会いにいくと、署長は毒もみの犯人は自分であることを認める。署長は裁判で死刑になり、刀で首を落とされるが、その時に、「あヽ、面白かった。おれはもう、毒もみのことときたら、全く夢中なんだ。いよいよこんどは、地獄で毒もみをやるかな。」と言う。それを聞いてみんなは感服する。 |
ちくま文庫「宮沢賢治全集 6〜『毒もみのすきな署長さん』」より
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