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注文の多い料理店

痛い目にあわされる都会からのハンター
 都会からやってきて遊びで動物を殺すハンターを賢治は嫌悪していたと思われ、「注文の多い料理店」ではそうしたハンターが山猫に痛い目にあわされるが、その手だてとしてなかなか巧妙な言葉の罠が仕掛けられている。

険しい山で道の迷ったハンターたち  都会から狩猟にやってきた2人の若い紳士が何も獲物を打つことができないまま山奥を白熊のような犬を2ひきつれて歩いていくが、山が険しいため犬たちは泡を吐いて死んでしまい、2人はおじけづいて戻りたくなる。「なあに戻りに、昨日の宿屋で、山鳥を拾円も買つて帰ればいゝ。」などとお金を出せば何でも買えると思っている都会人らしい会話をかわす。しかし、戻るにも道がよくわからなくなっていた。
西洋料理店・山猫軒  「風がどうと吹いてきて、風がざわざわ」して何か不気味な雰囲気になってくる。そして気がつくと、後ろに立派な洋館があり、「西洋料理店・山猫軒」という札がでている。空腹を覚えていた2人は、こんな山の中に立派なレストランがあるのはおかしいと思いながら、食事にありつけそうなのを喜ぶ。そしてガラスの戸には、「どなたもどうかお入りください、決してご遠慮はありません」と書いてあるのだ。
数々の奇妙なメッセージ














ハンターたちの恐怖
  中に入っていくとこの建物にはおかしなことにいくつも戸と廊下があり、ガラス戸にはいちいちお客への奇妙なメッセージが書いてある。「ことに肥つたお方や若いお方は、大歓迎いたします」「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」「鉄砲と弾丸(たま)をこゝへ置いてください」「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡(めがね)、財布、その他金物類、ことに尖(とが)つたものは、 みんなこゝに置いてください」「壷のなかのクリームを顔や手足にすつかり塗つてください」「いろいろ注文が多くてうるさかつたでせう。お気の毒でした。もうこれだけです。どうかからだ中に、壷(つぼ)の中の塩をたくさんよくもみ込んでください」
 ここまできてさすがに2人は、料理されようとしているのは自分たちであることに気づく。逃げようとしても後ろの戸は動かず、目の前の扉のがき穴から、2つの青い目玉がのぞいている。2人は白熊のような犬たちに助けられるが、東京に帰っても恐怖で「紙くづのやうになつた」2人の顔はもとに戻らなかった。
ちくま文庫「宮沢賢治全集 8〜『注文の多い料理店』」より

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