問題発見的なリサーチ

 行政関連の仕事でも、民間企業の仕事でも、関係者のあいだで、さまざまな要因が複雑に絡み合っていて、何が取り組むべきほんとうの問題、ほんとのテーマなのか、はっきりしない場合が多いと言えます。そういう場合には、フィールドワーク型の手法を中心にして、課題やテーマの整理をする問題発見的なリサーチが効果的です。
1. 問題発見と課題整理のための調査

▼例1「1990年代日本の課題」

 フィールドワーク型の方法を通じて問題発見と課題の整理を需要研究所が行った調査研究の一例が「1990年代日本の課題」です。

 このプロジェクトでは、NIRAからの依頼でぴあと需要研で調査研究チームをつくりました。学校の秩序からははみだし気味で、さまざまな分野の文化的表現に強い関心をもつ人たちを中心に、自分なりの模索をしている多数の若者たちを選び、掘り下げたインタビューを重ね、それを通じて、若者文化の課題を整理しています。

 この調査は、80年代後半に実施し、90年代を見通し、課題を検討した訳ですが、ここでの問題把握は、90年代以降に実際に起きた事態を理解するよい手かがりになると思います。



▼例2 「芸能実演家の活動と生活実態」調査

 芸能実演家団体協議会は、さまざまな分野の芸能実演家団体からなる組織で、5年ごとに「芸能実演家の活動と生活実態」調査を実施しています。

需要研究所では、1989年、1994年、1999年の調査の設計、分析、報告書作成のお手伝いをしました。

 能、歌舞伎、邦楽、日本舞踊、演芸、新劇、クラシック音楽、バレエなど多様な分野の芸能実演家を対象に、1年間の実演活動、教授活動の実態とそれによって得た収入、実演活動の課題などについて、具体的に把握しています。この調査では、異質な伝統や組織原理をもつさまざまな芸能実演分野を対象としているので、芸能実演家全体の共通の課題とともに、異質な分野の比較を通じて、それぞれの分野の特質を分析しています。

 各分野の芸能実演家のインタビュー調査とアンケート調査を組み合わせることによって、各分野の具体的な動きと大きな流れとが結びき立体的な把握が可能になっています。

  99年調査では、「芸能実演家の技能や経験を生かした地域での事業、プログラムへの参加」をテーマのひとつにしています。分析結果から、地域づくりのテーマと実演家の問題意識が噛み合うのは、どんな場合かがよくわかります。




▼例3 「自動車部品商の経営戦略」

 自動車部品商は、専業整備工場から注文を受けて必要な部品を品揃えして届ける仕事をしている補修用部品流通業です。主な部品にはカーメーカー・ブランドの純正部品と部品メーカー・ブランドの優良部品があり、さらにリサイクル部品もあります。こうした横断的な仕入れのチャネルをもち、ユーザーのニーズに応じて、機敏に品揃えをすることが求められています。

 縦割りの流通が支配的な自動車業界の中で、自動車部品商と専業整備工場は横断的な機能をもっているため、個性的な経営者の多い業界です。

 自動車整備業界では、規制緩和の進行とともに、周辺の業界からの参入と新業態の開発が活発に進みつつあり、傍観していると自動車部品商の主な顧客である専業整備工場のシェアがどんどん低下していく状況にあります。

 「自動車部品商の経営戦略」では、関連業界のインタビュー調査と部品商のアンケート調査をもとにして、こうした環境変化の下で積極的に活路を拓く、自動車部品商の業界戦略について整理しています。



2. 市場開拓のための調査

 自社の商品の販売促進策、新商品開発を進めるには、さまざまな顧客のニーズを的確に分類し、自社と競合各社のさまざまな商品や店鋪を、それぞれのニーズとの関連で、位置づけすることが重要です。

 それによって、自社の優位なポジションを確立するために、どのような顧客のどのようなニーズに重点的に応える商品開発、訴求や販売努力をするのがよいか、明らかになります。

 調査の方法としては、「フィールドワーク+マス・サンプル調査」が一般的です。

3. 販売情報データの活用の仕組みづくり

 流通業では、販売情報データを活用して、問題点やビジネス・チャンスを早く発見することが、もっとも重要な課題のひとつになっています。

 コンピュータの普及によって、販売情報などのデータの集積は容易になっていますが、データが十分に活用されず、「宝の持ち腐れ」になっている場合が多いようです。

 事業展開の手がかりとなる意味のある情報を読みとるには、さまざまな角度から、データの加工・分析をしてみることが必要になります。例えば、商品や顧客、期間などのよい分類の仕方、括り方を見つけると、データの意味がはっきりしてきます。そうした、さまざまな試行錯誤がしやすい、システムをつくっていくことが重要です。

 需要研究所では、ソフトウェアハウスと連携して、データをうまく活用できる仕組みづくりのお手伝いをしています。

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