English

ポラーノの広場

祝祭的な場所としてのポラーノ広場をめぐる争い
 ポラーノの広場はモリーオ市の郊外にあると伝えられる野原のまん中の祭りの場所で、「そこへ夜行って歌へば、またそこで風を吸へばもう元気」がつくとか、オーケストラがあって「誰(たれ)でも上手に歌へるやうになる」と言われている。こうした祝祭的な場所を選挙のための酒盛りの場にしてしまった既得権益をもつ人たちと、むかしのをポラーノ広場を自分たちの手にとりもどそうとする若者たちとの争いが演じられる。

美しいイーハトーヴォの回想の物語  この物語はモリーオ市の博物館に勤めていたキューストが誌したという形になっていて、「あのイーハトーヴォのすきとほった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい森で飾られたモリーオ市」と語り手がなつかしく回想する美しい場所にのどかな時間が流れる。
キューストとファゼーロの出会い  キューストがある朝目覚めると飼っていた山羊(やぎ)が行方不明なので探しに出かける。途中でキューストの山羊を連れている若者ファゼーロに会い、山羊を返してくれる。キューストが何かお礼をあげたいと話しているうちにファゼーロがポラーノの広場を探していることがわかる。ファゼーロの話では、昔ばなしのポラーノの広場がこの頃もあるようで、夜野原からそんな音が聞こえてくると言う。それで、キューストはお礼にイーハトーヴォの野原の地図をファゼーロに買ってあげることにする。
ポラーノの広場を探す  10日ほどたった日夕方の、ファゼーロと友達のミーロがキューストの小屋に訪ねてきて、地図をもって3人でポラーノの広場を探しにいく。つめくさの花がたくさん咲く野原を行くとたしかにどこかからセロかバスのような音が聞こえてくるがその日はポラーノの広場を見つけることができない。それから5日後、キューストの所にファゼーロがやってきて、とうとうポラーノの広場に行く道をみつけた、ミーロは先に行って待っているという。
山猫博士たちとの争い  3人がポラーノの広場に辿りつくと、オーケストラがワルツを演奏し、山猫を釣って外国に売るといわれ山猫博士というあだ名のデステゥパーゴやファゼーロの雇い主のテーモたちが酒盛りをしている。キューストたちが酒を飲まないから水を欲しいというと、山猫博士は楽団に演奏させて、「ポランの広場の 夏祭り/酒を呑(の)まずに 水を呑む/そんなやつらが でかけて来ると/ポランの広場も 朝になる/ポランの広場も 白ぱっくれる」と歌う。それを聴いてファゼーロは「酒くせのわるい 山猫が/黄いろのシャツで 出かけてゐると/ポランの広場に 雨がふる」と歌いかえす。デステゥパーゴは怒って決闘の騒ぎになるが、デステゥパーゴがファゼーロに負けてしまう。
山猫博士とファゼーロの失踪  その後、デステゥパーゴとファゼーロが失踪するという事件がおきる。キューストはファゼーロのことを心配しながら海岸地方に出張し、帰りにセンダード市により、身を隠しているデステゥパーゴをみつける。そして、ファゼーロのことを問いただすが知らないらしいことがわかる。
本当のポラーノの広場をめざす船出  キューストが家にもどるとファゼーロが訪ねてきて、彼はセンダードに行って、革染めの工場で働いていたことを知る。そこで覚えてきた技術を生かし、ポラーノの広場の近くの森の工場で革なめしの仕事をし、ミーロはハムをつくることになったという。キューストが出かけてみると会社の株が下落してデステゥパーゴ逃げてしまって困った人たちと一緒に、お互いが必要なものを作ることになったのだ。キューストとファゼーロたちは、「むかしのほんたうのポラーノ広場」を自分たちの手でつくろうと誓いあう。
ちくま文庫「宮沢賢治全集 7〜『ポラーノの広場』」より
賢治作品の
リズム
社会改革者としての賢治
風、雨、雪・・・
キツネ、ネズミ、馬…
植 物
イーハトーヴォと異境
賢治の作品世界
宮沢賢治の宇宙