Q
(213) 永訣の朝でアレって思ったんですけど、「兜率の天の食に変わって〜」のと「天上のアイスクリーム〜」どっちが正しいんですか?教えて下さい!! (福島県立聾学校)
A
Date: Sat, 16 Oct 2010 ne1365さん
Date: Fri, 29 Sep 2006 猫さん
Date: Wed, 31 Mar 2004 Yamamotoさん
Date: Sun, 13 Jul 2003 shunさん
Date:Sat, 16 Oct 2010 ne1365
キリスト教と仏教の違いと言い切ってしまったご解答がありますが、違うと思います。
「天上」というのも仏教思想の中で扱う用語で、キリスト教でいう「天国」とは
違います。「天界」「天道」「天上界」であり、兜率天もこのなかに含まれます。
兜率天では弥勒菩薩が修行をされていて五十六億七千万年後の下生し、全てを救
う(弥勒下生説)という思想が仏教にはあり、この弥勒救済が、直前のトシの言
葉の「生まれ変わったら」と呼応していると考えられます。「兜率天」のほうが、
この弥勒菩薩の救いの思想に近づいた表現になっていると言えますね。「詩」は
自由に解釈していいとは思いますが、熱烈な仏教徒(法華系)であった宮沢賢治
が、ここでキリスト教の思想を持ち込むのは不自然ではないかと思われますし、
それを正解として言い切ることに看過できなくなって、書き込みました。たまた
ま、今、勤務している学校で授業をしている者として、多様な見方を尊重しつつ
も、基本的な背景を押さえずにひとつの見方を簡単に「正解」として決めつける
ことに、どうしてもひっかかるものを感じましたので……。失礼しました。
Date: Fri, 29 Sep 2006 猫
キリスト教的な表現と仏教的な表現の違いです。
私はキリスト教的な表現の方が良いと思います。
Date: Wed, 31 Mar 2004 Yamamoto
宮澤賢治の詩の世界 (mental sketches hyperlinked)
http://www.ihatov.cc/
を参照してみてください。
『春と修羅 〔第一集〕』 関連草稿一覧
http://www.ihatov.cc/tabl_1.htm
によると、
永訣の朝(初版本)
http://www.ihatov.cc/haru_1/047_d.htm
の次から、枝分かれしてます。
Date: Sun, 13 Jul 2003 shun
こんにちは。
賢治の生前出版された唯一の詩集「春と修羅」(賢治本人は詩集でなく心象スケッチと呼びたがったようですが) これの初版(つまり印刷された本)においては、
「どうかこれが天上のアイスクリームになって〜」となっていました。
ところが、いったん出版された後に賢治が自らの筆で本のページに直接手入れ(修正)を施したものが少数残っており、それによると「どうかこれが兜率の天の食に変わって〜」と修正されているのです。
ですから、後年の編集者の考え方によって、それぞれ異なる内容のものが発行されているというわけです。なにしろ作者がもうこの世にいないのですから「どっちで出した方がよろしいですか?」とは聞けませんからね。
もっと細かく言えば、「手入れ本」にも3つの種類あって、さらに最初の印刷用原稿用紙もそれぞれと違っている部分があり、計4つのパターンが遺されていると言われています。このうちどれを収録したかは、本の巻末あたりに注釈されていますので、機会があったら探してみてください。
一冊の本の中でそれぞれの良い部分を採取していることもあります。なんとも、ややこしいですね(笑)。
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