Q (284)
オツベルと象の舞台となっている場所はどこなのでしょうか。インドとかタイとか諸説あるようですが・・・(筋肉)

A
Date: Wed, 10 Nov 2004  フラドのガコブタさん

Date: Sat, 6 Nov 2004  岡村美里さん


Date: Wed, 10 Nov 2004
   フラドのガコブタ

11月6日付けの岡村美里さんのご回答、いちいちごもっともですが、五番目の論拠にあります《「オツベル〔Otbert〕」はフランス・ドイツ両国で通用する名前で、「財産家」という意味をもつ。出版社の誤りから「オッペル〔Oppel〕」とされていた時期もあったが、この場合もドイツ名・フランス名・「財産家」というのは同じ。》という箇所のフランス語についての知見は、どこで獲られましたか? フランス語の広く権威を認められている大きな辞書や、これまた大きな百科事典・固有名詞辞典にいろいろ当たってみましたが、OtbertもOppelも出てこないで困惑しています。ご教示お待ちいたします。


Date: Sat, 6 Nov 2004
   岡村美里

1 稲作「稲こき機械の六台もすえつけて…」
 稲作は東アジアを中心に行われている。
2 象「…白象がやって来た。」
 アジア象の場合、東南アジアに分布。インド・インドシナ半島周辺では、白象にまつわる話が多い。
3 ビフテキ「…六寸ぐらいのビフテキだの、…」
 ヒンドゥー教では牛を神聖な動物とし、食べることはない。オツベルは現地人ではないだろうが、使用人は現地人の可能性が高い。そうなってくると、彼らがヒンドゥー教徒の場合、牛を殺して調理するのも無理がある。つまり、ヒンドゥー教を信仰する地域は物語の舞台候補から外される。
4 沙羅樹「この時山の象どもは、沙羅樹の下の暗がりで、…」
 インドからインドシナ半島にかけて分布。
5 オツベル「オツベルときたら…」
 賢治はドイツ語(東京独語学院)とフランス語(独学)を学んでいた。「オツベル〔Otbert〕」はフランス・ドイツ両国で通用する名前で、「財産家」という意味をもつ。出版社の誤りから「オッペル〔Oppel〕」とされていた時期もあったが、この場合もドイツ名・フランス名・「財産家」というのは同じ。
6 賢治の時代
 東南アジアは西欧列強の殖民地であった。インド・ビルマはイギリス領、ラオス・カンボジア・アンナン(現在のベトナム)はフランス領。シャム(現在のタイ)は独立を保っていたが、シャムの北部にはフランス勢力が入り込んでいた。

以上のことから考えて、ラオス・カンボジア・アンナン・タイ北部(つまりインドシナ半島)が舞台の可能性が高いようです。これらの国を土台とし、そこに賢治独自の考えをミックスさせているのでしょう。

【気になる点】
・「碁などをやっていたのだが、…」碁は中国・日本にしか普及していませんでした。
・「『お筆も紙もありませんよう。』…すずりと紙をささげていた。」インドシナ半島でも筆と硯を使って字を書くのでしょうか? 
・「オツベルと象」は、インド暦に沿って読み進めると、太陽暦や日本の太陰暦に 比べて話がスムーズに進行します。このインド暦はタイでも使われているのですが、 ラオス・カンボジア・アンナンではどうなのか、残念ながら手元に資料がないため、 はっきりしたことが言えません(すみません…)。〔その手元にない参考文献:岡田 芳郎『アジアの暦』大修館書店(2002年)〕

賢治が作品中のどこまでを意識的に現実世界に沿わせているか、にもよりますが…。


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