Q(43)植物の項に、「やどりぎ」がなかったので、お聞きしたいのです。 「水仙月の四日」をはじめ、いろいろ出てきますが、どんなものか、 いまいちわかりません。
知っている方がいらしたら、教えて下されば幸いです。 どうぞよろしくお願いします。(五十嵐さんより)

A
Date: Sun, 19 Sep 1999   きょうこさん

Date: Mon, 23 Aug 1999   さいかち君さん

Date: Thu, 12 Aug 1999   寺内美知子さん

Date: Tue, 3 Aug 1999   寺内美知子さん


Date: Sun, 19 Sep 1999
   きょうこ

遠目には、鳥の巣が木の枝にのっかているように見える、丸い毬のようなものです。かわいい形をしています。


Date: Mon, 23 Aug 1999
   さいかち君

ヤドリギとは木に寄生している植物です。木全体に寄生するのではなく枝の一部に寄生しています。枝の先にもうひとつ丸く植物がくっついている感じです。木に葉がなくなった冬には木とヤドリギが一体となったシルエットがとてもきれいです。


Date: Thu, 12 Aug 1999
   寺内美知子

先日、「やどりぎについて教えて」というメールに対して やどりぎについて書きましたが、あのときには、「水仙月の四日」を 読んでいなかったので、 追加致します。

「若い木霊」にも栗の木のやどりぎが出てきます。
(略)  次の丘には栗の木があちこちかがやくやどり木のまりをつけて  立ってゐました。
 そのまりはとんぼのはねのやうな小さな黄色の葉から出来てゐました。
(略)
とあります。

「水仙月の四日」にやどりぎが出てくるのはこの箇所です。
(略)
 雪童子は、風のやうに象の形の丘にのぼりました。雪には風で介殻のやうなかたが つき、その頂には、一本の大きな栗の木が、美しい黄金いろのやどりぎのまりをつけ て立ってゐました。「とっといで。」雪童子が丘をのぼりながら云ひますと、一疋の 雪狼は、主人の小さな歯のちらつと光るのを見るや、ごむまりのやうにいきなり木に はねあがつて、その赤い実のついた小さな枝を、がちがち齧りました。木の上でしき りに頚をまげてゐる雪狼の影法師は、大きく長く丘の雪に落ち、枝はたうとう青い皮 と、黄いろの心(しん)とをちぎられて、いまのぼってきたばかりの雪童子の足もと に落ちました。
(中略)
 雪童子はわらひながら、手にもってゐたやどりぎの枝を、ぷいつとこどもになげつ けました。枝はまるで弾丸のやうにまっすぐに飛んで行つて、たしかに子供の目の前 に落ちました。
 子供はびっくりして枝をひろって、(略)
(中略)
 子どもは、やどりぎの枝をもって、一生けん命にあるきだしました。
(略)
「あのこどもは、ぼくのやったやどりぎをもってゐた。」雪童子はつぶやいて、 ちょっと泣くやうにしました。

初版本には、三色刷で別紙に刷られた装画が貼り込まれているそうです。 ちくま文庫に小さな装画が刷り込まれていて、これを見ると、大きな木に やどりぎがついているのを遠くから見た姿になっています。

雪の高原を歩いていて雪にまかれ、一晩を過ごしたのち助けられる子供と、 雪童子、雪婆んご、雪狼との物語ですが、 雪童子が子供にどうしてやどりぎの枝をなげつけたのか、が疑問になります。

やどりぎが、命の証になっていて、これを拾ったから、子供は雪の中で 命を落とすことがなかったのでしょうか。

もうひとつの、子供が雪の中で迷ってしまう話「ひかりの素足」では、 兄の一郎は命が助かりますが、弟は死んでしまいます。 これと関連させると、「水仙月の四日」の子供の命は助かったのか、 死んでしまったのか、と不安になります。

「大きな栗の木が、美しい黄金いろのやどりぎのまりをつけて立ってゐました」と いうのは、美しい景色です。
栗の木にやどりぎがつくかどうか、疑問でしたが、 http://www.wood.co.jp/mk/mk93.htmをみたら、エノキ、ケヤキ、ニレ、アカシデ、クリ、ブナ、ミズナラ、カシワ、クワ、ヤナギ、サクラ等、落葉広葉樹の枝上にはえている。
とあり、栗にも寄生するとわかりました。
さらに、http://www.asahi-net.or.jp/~qi3m-oonk/tosyokan/fantasy/w-mistol.htm では、北欧神話で、やどりぎは、光の神バルドルを殺す唯一のものだった ことがわかりました。
光の神バルドルは、誰からも愛される、美しい、純粋な心の持ち主であった。 ある時彼は、恐ろしい不吉な夢を見て、苦しむ。 心配した母のフリッグは、世界中の者に頼んで、彼を傷つけないことを 誓ってもらう。 火も、水も、全ての金属も、何もかもがフリッグに、誓いを立てた。 そして、本当にバルドルが、何者にも傷つけられないことを確かめた神々は、 面白がって、彼に色々なものを投げる遊びを思い付いた。
しかし、やどりぎだけは誓いを立てることをしていなかったために、 やどりぎで作られた矢で光の神バルドルは死んでしまう、という話です。
また、やどりぎは、「金色の枝」と呼ばれ、それは、 時期になると、 枝が金色がかるからで、それゆえ、光の象徴でもあった、とあります。
やどりぎを投げつけられて死ぬ無垢な存在が、「水仙月の四日」の子供と ぴったりあってしまいますね。

「赤い実のついた小さな枝」というのも、赤い実がつくかどうか?
クリスマスリースになっていて普通見かけるのは「白い実」という記憶です。
http://www.hakodate.or.jp/nature/flower/yadorigi/yadorigi.htm では、花は枝先に2?3個つき、黄色、果実は液果で、熟すと淡黄色で半透明 とあります。 ネット上で調べて見ましたが、実の写真がないのでまだ、わかりません。 けれど、赤い実は、「黄金いろのやどりぎのまり」との対比で美しく見えます。


Date: Tue, 3 Aug 1999
   寺内美知子

ヨーロッパのクリスマスにつきものの飾りですが、 英語では mistletoe [misltou] という手ごわい発音です。 変わった形の葉っぱも、丸くなる全体の形も面白いし、 白い実がなったところもきれいです。 最近は東京のおしゃれな花屋でもクリスマスに売っています。

もともとはキリスト教以前からゲルマンのドルイド教の おまじないのような飾りだったのが、 ドルイド教がキリスト教に改宗されて、 ドルイド教の冬至の祭りの日がキリストの誕生日に取って 代わったのと一緒に、ヤドリギもクリスマスに飾られるよう になったそうです。

日本でも、苗場等のスキー場で、よく見かけます。 スキーシーズンには葉が落ちているので、高い枝にヤドリギだけが 残っていて、気にしていれば、すぐ見つけられます。
http://www.hakodate.or.jp/nature/flower/yadorigi/yadorigi.htm に、わりとわかりやすい写真が載ってました。


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