雲の峯

 それで日本人ならば、丁度花見とか月見とかいふ処を、蛙どもは雲見をやります。
 「どうも実に立派だね。だんだんペネタ形になるね。」
 「うん。うすい金色だね。永遠の生命を思はせるね。」
 「実に僕たちの理想だね。」
 雲のみねはだんだんペネタ形になって参りました。ペネタ形といふのは、蛙どもではたいへん高尚なものになってゐます。平たいことなのです。
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第7巻『蛙のゴム靴』P.110」