English 山猫からの葉書 |
生き生きとした書き出し |
「どんぐりと山猫」は、賢治が出版した童話集「注文の多い料理店」の冒頭におかれている。それだけに、自信をもてる書き出しの作品だったのだと思われる。 | |
一郎に届いた山猫からのおかしな手紙 | 「をかしなはがきが、ある土曜日の夕方、一郎のうちにきました。
あなたは、ごきげんよろしいほで、けつこです。 ね床にもぐってからも、山猫のにやあとした顔や、そのめんだうだという裁判のけしきなどを考えて、おそくまでねむりませんでした。」 この冒頭の部分を読んだだけで、読者も一郎と一緒にわくわくする気持ちになってしまう。 |
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めんどうな裁判というのは、なんと「頭のとがつたどんぐり」と「まるいどんぐり」と「大きいどんぐり」の中で誰が偉いかという、どんぐりどうしのたわいのない言いあらそいだ。 しかし、どんぐりの争いをとりなす判事が山猫で、その相談に子供の一郎が呼ばれるという設定が何とも楽しい。 |
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誇り高い森の住人としての山猫 | 山猫が出てくるのは、「そこはうつくしい黄金(きん)の草地で、草は風にざわざわ鳴り、まはりは立派なオリーブいろのかやの木のもりでかこまれ」たところだ。 「風がどうと吹いて、草がいちめんに波だち」「山猫(やまねこ)が、黄いろな陣羽織のやうなものを着て、緑いろの眼をまん円にして立つてゐました。」という現れ方をする。 「注文の多い料理店」でもそうだか、山猫は誇り高い森の住人として描かれているといえる。 |
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一郎に対する山猫のもてなし | そういう山猫が、「注文の多い料理店」では、都会から来たハンターを痛い目にあわせるのに対して、「どんぐりと山猫」では、森が好きな子供の一郎を裁判に招き、大事な客としてもてなすわけである。 |
ちくま文庫「宮沢賢治全集 8〜『どんぐりと山猫』」より この作品に関するコラムへ 1 |
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