赤い封蝋細工のほほの木の芽が、風に吹かれてピッカリピッカリと光り、林の中の雪には藍色の木の影がいちめん網になって落ちて日光のあたる所には銀の百合が咲いたやうに見えました。 |
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第8巻『雪渡り』P.130」 |
(けはしくも刻むこゝろの峯々に いま咲きそむるマグノリアかも。)斯う云う声がどこからかはっきり聞こえて来ました。諒安は心も明るく見まはしました。 すぐ向ふに一本の大きなほほの木がありました。その下に二人の子供が幹を間にして立ってゐるのでした。 |
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第6巻『マグノリアの木』P.139」 |