くるみ

 「おや、変なものがあるよ。」カムパネルラが、不思議さうに立ちどまって、岩から黒い細長いさきの尖ったくるみの実のやうなものをひろひました。
 「くるみの実だよ。そら、沢山ある。流れて来たんぢゃない。岩の中に入ってるんだ。」
(中 略)
 「くるみが沢山あったらう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらゐ前のくるみだよ。ごく新しい方さ。」
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第7巻『銀河鉄道の夜』P.258」

 ある時私たちは四十近くの半分炭化したくるみの実を拾ひました。それは長さが二寸位、幅が一寸ぐらゐ、非常に細長く尖った形でしたので、
(中 略)
 この百万年昔の海の渚に、今日は北上川が流れてゐます。
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第6巻『イギリス海岸』P.335」


 くるみを通して、天の川と北上川を重ねて見ているのでは? 北上川天の川