ずうつと昔、岩手山が、何べんも噴火しました。その灰でそこらはすつかり埋まりました。
(中 略)
 噴火がやつとしづまると、野原や丘には、穂のある草や穂のない草が、南の方からだんだん生えて、たうとうそこらいつぱいになり、それから柏や松も生えだし、しまひに、いまの四つの森ができました。
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第8巻『狼森と笊森、盗森』P.29」

 狼 森
 すると森の奥の方で何かパチパチ音がしました。急いでそつちへ行つて見ますと、すきとほつたばら色の火がどんどん燃えてゐて、狼が九匹、くるくるくるくる、火のまはりを踊つてかけ歩いてゐるのでした。
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第8巻『狼森と笊森、盗森』P.33」

 笊 森
 山男は、金いろの眼を皿のやうにし、せなかをかがめて、にしね山のひのき林のなかを、兎をねらつてあるいてゐました。
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第8巻『狼森と笊森、盗森』P.35」

 盗 森
 すると森の奥から、まつくろな手の長い大きな大きな男が出て来て、まるでさけるやうな声で云ひました。
 「何だと。おれをぬすとだと。さう云うやつは、みんなたゝき潰してやるぞ。ぜんたい何の証拠があるんだ。」
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第8巻『狼森と笊森、盗森』P.38」


 これらの生みの親である岩手山とはどんな山なのか? 岩手山
 これらの森は小岩井農場の北に存在する。 小岩井農場
 笊森に暮らす山男とは? 山 男