土神の方は神といふ名こそついてはゐましたがごく乱暴で髪もぼろぼろの木綿糸の束のやう眼も赤くきものだってまるでわかめに似、いつもはだしで爪も黒く長いのでした。 |
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第6巻『土神ときつね』P.110」 |
土神の棲んでゐる所は小さな競馬場ぐらいある、冷たい湿地で苔やからくさやみじかい蘆などが生えてゐましたが、又所々にはあざみやせいの低いひどくねぢれた楊などもありました。 水がじめじめしてその表面にはあちこち赤い鉄の渋が湧きあがり見るからどろどろで気味も悪いのでした。 |
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第6巻『土神ときつね』P.115」 |
本当に土神は樺の木のことを考えるとなぜか胸がどきっとするのでした。そして大へんに切なかったのです。このごろは大へんに心持が変ってよくなってゐたのです。ですからなるべく狐のことなど樺の木のことなど考えたくないと思ったのでしたがどうしてもそれがおもへて仕方ありませんでした。 |
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第6巻『土神ときつね』P.119」 |
樺の木のことを好いていた土神。その樺の木はどのような性格をもっていたのか? | →樺の木 |