賢治作品のユーモア

 賢治の物語の多くは、読者をいっぺんに捉えてしまうユーモラスなイメージに富んでいる。かまどの中に入って眠る癖のある窯猫とか、顔を洗わない狸とか、山猫から一郎にきたへたな字のおかしな葉書とか、蛙の雲見とか、奇抜な要素の組み合わせから魅力的なイメージがつくりだされる。
 しかも、賢治の作品のユーモアには、さまざまな調子のものがある。たとえば「猫の事務所」の窯猫はユーモラスな感じと悲哀が混じり合っているし、「洞熊学校を卒業した三人」ではとぼけたユーモアと不気味さが重なりあっている。また「タネリはたしかに…」には、言葉がまだしっかりしていない、好奇心に富んだ小さいタネリのでたらめな歌や木や鳥、母親とのユーモラスなやりとりの面白さがある。

賢治作品のユーモア
賢治作品のリズム
星や風、生き物からの
贈り物としての詩、物語
科学と詩の出会い
科学と詩の出会い・2
心のたしかな出来事
としてのファンタジー
異質の者に対して
開かれた心
子供から大人への
過渡期の文学
作品の多義性、重層性
作品における
倫理的な探究
エコロジスト的な探究
教師としての賢治
社会改革者としての賢治

宮沢賢治とは誰か  宮沢賢治の宇宙