●賢治は熱心な仏教徒でもあり、作品の中でもしばしば倫理的なテーマが現れる。子兎のホモイがひばりの子を助けて送られた「貝の火」は持ち主の行いによって火の燃え方が美しくなったり曇ったりするというし、情報通が自慢で威張っている「クンねずみ」は教え子の子猫に食べられてしまう。「洞熊学校を卒業した三人」はユーモラスな語り口で語られているが、大きいものが立派だという洞熊先生の教えをうけた、蜘蛛となめくじと狸のあわれな行く末の話である。
●「銀河鉄道の夜」では、銀河をどこまでも旅する少年ジョバンニの「ほんたうのさいはいは一体何だろう」という問いが物語全体を貫いている。「学者アラムハラドの見た着物」では「人はほんとうにいヽことが何だかを考えないでゐられない」のが人間の特質だともいう。 |
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